ギャリー・サウスウェル工房訪問

(2003年7月11日)

今回のレポートでは、まあ、ついでですので、イギリスの鉄道旅行の様子なども、合わせてご紹介したいと思います。

8時、近所の駅のだだっ広い駐車場に車を置いて、いざ出発。鉄道利用者に限り、駐車料金は一日で600円くらいです。奥に見えるのは、火力発電所のクーリングタワー。原発ではありません。あの発電所の裏に、私の勤める会社があります。

右は、当の駅ですが、ちっちゃくてよく見えませんね。一応、特急の止まる駅なんです。最近は、汽車の切符はインターネットで買えるようになりました。申し込むと、速達で郵送されてくるので、とても便利です。料金体系は複雑で、払い戻しや列車の変更に制限のある割引切符だと、正規料金の半額くらいだったりします。

さて、予定の列車は8時18分発。イギリスでは、列車は5本に1本が10分以上遅れます。 今日はどうだろう?と思っていると、なんと定時に到着。ラッキーでした。この時間、ロンドンへ通勤する人たちで、ごった返しているといってもこの程度。日本のラッシュとは比べ物になりません。

私の住む、ディッドコットからロンドンまでは特急で45分程度です。関西なら、京都−大阪、あるいは和歌山−大阪くらいの感じでしょうか。9時頃にパディントン駅に到着しました。ここは、ロンドンの西の玄関口。

ところで、イギリスの駅は、ビクトリア朝の時代からほとんど変わっていません。 旅行者には風情のある駅でも、毎日使うものにとっては、ただの老朽化したボロ駅です。この国の公共交通機関のインフラへの資金投入の貧弱なことには、あきれるばかりです。

さて、ここからは、地下鉄で乗換駅である、セントパンクラス駅に向かいます。セントパンクラスは、ハリーポッターの映画にも出てきたキングスクロス駅と隣り合わせで、ブリティッシュライブラリも直ぐ近くです。左が、セントパンクラス構内ですが、どの駅も写真にとると同じように見えますね。こちらの駅も、ボロ。写っている汽車は、インターシティーと呼ばれる特急です。この駅からは、主にイングランド中北部へ向かう列車が出ます。

列車は、イギリスの田園地帯を北へ走ること二時間、定時の11時半に無事ノッティンガムに到着しました。ノッティンガムへ来るのは10年ぶりくらいでしょうか。駅からギャリーの工房までは、とりあえずタクシーで。ノッティンガム市内は、路面電車の線路の敷設のための工事で、とても込み合っていました。

これが工房の入り口です。ここは、ノッティンガム市が運営するワークショップセンターで、版画家のアトリエとか、種々雑多なものが同居しています。

こちらは、入り口にあった案内板です。Gary Souwthwell Guitar Maker と、あります。ギャリーのほかに、リトグラフの工房や、タンス・飾り棚(キャビネット)職人の工房などもありますね。

工房に待っていたのは、Gパンにランニングシャツ姿のギャリーと、もちろん待ちに待ったハウザーモデル。しかし、ギャリーは、開口一番、「いや、困ったことになったんだよねー」「朝からずっと困っているんだよねー」

はて、何事か?

左は、糸巻き取り付け前の我がギター。上にギャリーのお尻が写っています。

 

困ったことというのは、スローンの糸巻きが大きすぎてヘッドからはみ出してしまうのだと。 ギャリーがいつもハウザーに使うのは、イギリスのナントカ(失念)という手作りの糸巻きなのですが、その職人さんが病気で製作できなくなっていたのです。まあ、ここまでの事情はすでに聞いていましたが、なんと替わりに使う予定のスローンがヘッドからはみ出すとは、ギャリーも実際に糸巻きをつけてみるまでは気づかなかったんだそうです。 「いや、こんなことは初めてだよ、申し訳ない」 と、恐縮すること、しきりの彼でしたが、まあ、どうすることも出来ません。仕方なく、とりあえず、スローンの端っこをヤスリで削って短くしてナントカおさまるようにしよう、ということになりました。そこで、ギャリーのスローンと格闘すること20分ほど。糸巻きはめでたくサウスウェル・ハウザーのヘッドに収まったのでした。

「これでは、僕の気がおさまらないから、後でちゃんとした糸巻きと交換するからね」 「ロジャースでいいかなあ?」 こりゃあ、まるで、車を定期点検に出して、「替車は、ポルシェでいいかなあ?」 と訊かれるようなもんですね。良いも悪いもあったもんじゃありません。 思わず、「ふん、ふん」 犬のようにうなずいてしまいました。

さて、ここでギャリー・サウスウェル工房を一巡り、、、

 

ボール盤の右にあるのは、取り寄せてもらったカールトンのケースです。熱を吸収しにくいように、ちょっと地味ですが、グレ−を選びました。

右は、かなりモダンな切削装置。

 

 

 

ボディの枠が見えますね。

 

製作中のハウザーモデルとA−シリーズのギター。Aの方は、ボディがメープルです。

 

形に切り出す前の、表板、横板、裏板など

 

 

 

工具棚

 

 

左は、またまた工具棚。右は板を曲げる道具でしょう。

 

 

ガラス瓶の中には膠。右はポリッシャーですね

 

出来上がったギターを弾くギャリー。

「サワリだけなら、けっこういろいろ弾けるんだよ」

結局、工房には2時間くらいお邪魔して、ギターの調整をしながらいろいろお話してきました。興味深い話がいろいろありましたが、そちらの方は、楽器の紹介とあわせて、改めてお話したいと思います。

夕方の4時15分、予定通り、セントパンクラスに帰着。モダンな列車よりは、蒸気機関車の似合いそうな駅でしょう?

ロンドンから家までは、さらに2時間ほどかかったのでありました。

 

工房訪問記 (了)