|
マドリッド・グラナダ旅行
(2004年11月15-20日)
休暇をとって、骨休めにスペインへ行ってきました。今回の旅行の目的は、アルハンブラ宮殿を訪ねること、マドリッドで旧知の友人と会うこと、それから、北海道でフラメンコを習っている女房の学生時代の友人から頼まれたフラメンコ関係グッズの買い物です。フラメンコと言っても、ギターではなくて、踊り(バイレ)の方ですが。 実は、家内がこの友人のためにフラメンコのドレスを縫ってあげたのがきっかけで、最近、我が家には、ぽつりぽつりとフラメンコ関係の洋裁の注文が舞い込むようになりました。ですから、単なる買い物と言うだけでなく、女房にとっては、新作デザインのための情報収集という意味合いもあるわけです。これは、もともとフラメンコ好きの私にとっても、フラメンコ関係の店を見て回るとてもよい機会でありました。
マドリッド
さて、毎日、雨ばかり降って、もう、死にたくなるくらい天気の悪いイギリスをイベリア航空機で飛び立って2時間、マドリッドの街の上には、別世界のような雲ひとつない青空が広がっていました。宿は、プラド美術館近くのパラス・ホテルにとりました。 このホテルは、以前にも仕事で何回か泊まったことがありますが、大手チェーンに買い取られたせいか、10数年ぶりに滞在してみると、やや、ビジネスホテル化していました。とはいっても、今回のように旅行代理店経由の格安レートでなければ、おいそれとは泊まれない、高級ホテルではあります。さて、初日の夜は、無事、友人との再会を果たした後、マドリでも老舗のタブラオ、カフェ・デ・チニータスへ行きました。 ここを訪れるのも、やはり10数年ぶりです。行ってみると、以前に比べて客席が大幅に増設されていて、L字型の客席の角にあるステージを、2方向から見れるようになっていました。客の入りは、半分くらいだったでしょうか。フラメンコのショーは、普通、一晩に2ステージ。1回目が11時ころから始まります。この最初のステージは、たいていの場合、観光客向けの派手なバイレ中心のショーのことが多いようです。本当の通人向けのショーは、夜半すぎに始まるといわれますが、最近ではまったく同じショーを、二度繰り返すことも多いようです。さて、チニータスでは久しぶりにライブのフラメンコを堪能できました。とにかく、圧倒的なビート感。ああいう強烈なリズムは、ちょっと他のジャンルの音楽では経験できないでしょう。ギターは4本。いつも思うことですが、本当に、フラメンコ・ギタリストのラスゲアードは、魔法のようです。どうやったら、ああいうことができるのか・・でも、調弦が悪かったのが、やや気になりました。今の私の体力的では、とても最後まで見ていられませんから、残念ながら、一回目のショーが終わったところで、ホテルへ引き上げました。それでも、部屋へ帰ると時計は午前1時をまわっていました。
マドリッド、ショップめぐり
さて、翌日は、早速、買い物。とは言っても、ほとんどか友人のためのものですが。まずは、プエルタ・デル・ソル近くのマティというダンス用品の店へ向かいました。 ここでは、カスタネット、コルドベスと呼ばれる帽子(ガロティンを踊る時に使います。ソンブレロというやつですね)、髪飾りなどを買いました。このコルドベス、6ユーロ(1000円弱)ほどの値段でしたが、これが日本に入って来たとたんに、8000-10000円くらいになってしまいます。次に、オペラ座近くから、細い路地を進んでたどり着いたのが、エル・フラメンコ・ヴィヴェというショップ。ここでは、フラメンコ関係のものなら、ギターから、CD、衣装にいたるまで、ほとんどのものが手に入ります。 通販もしてくれますし、店の人も親切ですし、お薦めのショップです。ウェブサイトは、http://www.elflamencovive.es/novedades_all.asp です。 ここでは、以前からほしかった右手練習機を発見、即購入しました。それから、店長推薦のフラメンコ・教則DVDも買いました。それにしても、マドリッドというところはギターショップの多いところです。小路を歩いていると次から次へと出てきます。いくつか写真で紹介しましょう。
     
グラナダへ
いよいよ、アトーチャ駅から、タルゴ号という特急に乗ってグラナダへ向かいます。マドリからグラナダまでは6時間ほどかかります。 このタルゴという列車は、台車が特殊なメカニズムを持っていて線路の幅の違う、狭軌・広軌の両方の区間を走ることが出来ます。以前に、パリからマドリまでを寝台特急として走っているころに一度乗ったことがありますが、今回乗った車両はとてもモダンな新型でした。 アトーチャ駅もずいぶん様変わりしていて、以前にプラットホームのあったところは、まるで植物園のようになっていて、実際の乗り場は地下に移っていました。 こういう様子を見ると、「栄光の歴史」ばかりを奉って、もう100年近くも何の進歩もないイギリスの鉄道・施設がますますみすぼらしく思えてきます。アトーチャでは、つい先日、たくさんの犠牲者を出した、アルカイダのテロがあったばかりですから、構内各所に小銃を構えた警備員が立って、厳重な警戒をしていました。朝もやの煙る中を出発した列車は、赤茶けて荒涼とした野原の中を、ひたすら南下します。マドリッドを出て4時間ほど、列車がシェラ・ネバダ山脈に近づくと、あれほどまっ平らだった景色にも、ようやく起伏が見えてきました。 このあたりから先は単線区間です。列車は、険しい丘陵地帯を抜けて這うように進んでゆきます。たまにすれ違う貨物列車などをやり過ごすために、あっちで止まり、こっちで止まり・・・遅々として進みません。しかしまあ、ほぼ定刻の午後二時半過ぎ、タルゴ号は無事にグラナダ駅に到着したのでした。
アルハンブラ宮殿
アルハンブラ宮殿は、グラナダの北東部、城壁に囲まれた丘の上にあってグラナダの街を見下ろしています。 ヌエバ広場から、狭いゴメレス坂を上ってゆき、グラナダスの門をくぐると、うっそうとした森が丘の斜面を覆っています。ところで、このゴメレス坂は、たくさんのギター工房が軒を連ねていることで有名です。はっきりと看板の上がっているものだけで、4軒を数えました。フェレール、ロペス・ベリド、マヌエル・ディアスなどの名が見られます。A・モラレスという店は、工房ではなくてギター専門店のようです。   意外なことに、グラナダのイエロー・ページを調べても、ギター専門店はこのモラレス以外に見つかりませんでした。グラナダには、工房はたくさんあっても、いわゆるショップというのはほとんどないようです。この他にも、マリンや、ラジャ・パルドなど、たくさんの名工がグラナダに工房を構えているはずです。
チケットを買って入り口を入り、糸杉の並木道をのぼり、さらに左に折れて、きれいに刈り込まれた植え込みある道を進んでゆくと、まず見えてくるのがカルロス5世の宮殿です。 いわゆるアルハンブラ宮殿は、その裏にある、案外こじんまりした建物でした。建物に入って少し歩くと、すぐに、あのセゴビアのビデオであまりにも有名な「天人花のパティオ」に出ます。パティオを取り囲む回廊の所々には小さな噴水があって、陽の光がそのさざ波を壁に映して、微妙な動く模様を作り出していました。 実に周到に計算された設計だと思います。パティオの正面に見えるのが「コマレスの塔」。 ここからは、宮殿から谷をはさんで反対側のサクロモンテの丘とアルバイシン地区が一望のもとに見渡せます。小さな白い家の迷路のように入り組んだこの地区は、今でもアラブの影響を色濃く残す地域であり、ジプシーの住むフラメンコの故郷のような所だと言われます。しかし、実際に行ってみると、思ったよりもずいぶん小奇麗な所で、半分くらいは金持ちの外国人の別荘になっているんじゃないかとも思われます。
アルハンブラ宮殿で印象深かったのは、なんと言っても、壁一面に施された微細な装飾です。 その緻密で美しいことは、私の想像をはるかに上回るものでした。同じアラブの建築物でも、コルドバのメスキータなどは、かなり大掛かりにキリスト教徒の手によって改造されていますが、さすがにこの宮殿だけは、そのあまりの美しさのために、レコンキスタを悲願としたクリスチャンたちも手をつけるのにしのびなかったのでしょう。 「二姉妹の間」の天蓋などは、到底、この世のものとは思われません。同じイスラムといっても、トルコや中東の美術とはずいぶん違うように感じられました。この宮殿を建てた人々は、どんな人たちだったのでしょうね。
グラナダの洞窟フラメンコ
グラナダで行ったのは、サクロモンテの丘にあるロス・タラントスというタブラオです。どうもこのタブラオは、観光客相手のビジネスを一手に牛耳っているようで、どのガイドブックを見ても、一番最初に名前上がっています。 ミニバスによるホテルまでの送迎サービスまでしてくれます。素人相手のニセ・フラメンコを見せられるのではないか、という一抹の不安が頭をよぎりましたが、まあ、怖いもの見たさもあって、行ってみることにしました。約束の9時半にホテルのロビーで待っていると、10分ほど送れてミニバスがやってきました。 バスの中には私たちの他に、年配のカップルが一組。その後、さらにいくつかのホテルを回って、アルバイシン地区にたどり着いたころには、総勢10名ほどのグループになっていました。 ここで、学生アルバイト風の女の子のガイドが登場。英語とスペイン語で簡単な解説をしながら、迷路のような街並みの散策をしました。サン・ニコラス教会前からは、グラナダの町が一望のもとに見渡せます。その左側の闇の中には、ライトアップされたアルハンブラ宮殿の優雅な姿が浮かび上がっていました。 さて、問題のタブラオですが、坂の斜面に穴を掘って、その入り口に小さな門のような建物を立てた構造になっています。狭いホールを抜けると、ステージと客席が一体化した小さな洞穴があるばかりです。こんなところで踊れるのかなと思っていましたが、ショーが始まってみると、いや、なんとかなるものですね。それでも、ダンサーのドレスのすそが鼻先を掠めてゆきます。踊りやギターのレベルは、マドリのチニータスに遜色ないか、あるいはそれ以上だと感じました。何しろ、写真のとおりの近さですから、バイレ、カンテ、パルマ、ギターすべてのパフォーマーの呼吸が直接伝わってきます。その微妙なコミュニケーションがなんとも面白い。グラナダには、ロス・タラントス以外にも、もっとモダンで芸術的なフラメンコを謳ったタブラオもあるようでしたが、ともかく、シロウトの私には、文句なしに楽しめるショーでした。
スペインという国は、どこへ行ってもコロンブスにちなんだ記念碑や広場があります。 左の写真は「イザベル・ラ・カトリカ広場」です。それはともかく、5泊6日のスペイン旅行もこれでおしまい。グラナダ空港を飛び立った飛行機の窓の外には、かすかに雪をかぶったシエラ・ネバダの山々と、その麓のグラナダの街を見ることが出来ました。意外に思われるかも知れませんが、シェラ・ネバダではスキーが出来るんです。ですから、グラナダの街では、貸しスキー屋がちらほらと目にとまりました。
マドリッド・グラナダ旅行 (了)
|