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プラハで見つけたリュートギター
(2007年11月)
その楽器は、滞在していたプラハのホテル近くを散歩していたおり、たまたま通りがかった小さな骨董時計店の、ガラス戸ごしに何気なく覗き込んだ店の奥の壁に、古いマンドリンや大小さまざまの柱時計と並んで、ひっそりとぶら下がっていました。梨型のボディの大きさとネックの太さから、もしやと思い、店に入ってしげしげと眺めてみると、はたして、金属のフレットの打たれた指板の上にはスチールの弦が6本。それは紛れもないリュートギターでした。マンドリン風のヘッドに装着された糸巻きは機械式です。店員に尋ねると、1920−30年ころのイタリアで製作された楽器だということ。 リュートギターは、19世紀末に現れたギターとリュートのあいのこのような楽器ですが、機能的には調弦も含めてギターとまったく同じで、リュートを模したボディとヘッドを持った19世紀(20世紀初頭)ギターと言ってよいものです。
よく調べてみると、ブリッジ下の表面板にはっきりとしたクラックがあります。さらにロゼット横にも10センチ長の割れが見られました。こちらのほうは、かなり細いクラックで、見る角度によってはほとんどわかりません。そのほかには、若干の傷やニスのはがれなどはありますが、ボディには目立った損傷はなく、ネックも完全にまっすぐで、そりなどは見られませんでした。 肝心の値札には、315ユーロの数字。安物の量産ギターの値段です。しかし、表面板の割れのことなどもあり、その日は、いったんホテルへ帰り、その場で即決はしませんでした。
そして、ホテルで思案することしばし。明らかに補修の必要な楽器ですが、二日後に再び骨董店を訪れて、290ユーロまで値切って購入しました。
弦長620ミリ。弦幅は狭くて、ネックで38ミリ、ブリッジで56ミリ。ボディとネックは9フレットのところで接合されています。ヘッドの装飾は、写真で見てもわかるように、かなり雑で、お世辞にも手工芸品として格調の高いものではありません。また、音に直接関係する部分の工作については、私にはなんとも判断しかねます。左手で弦を押さえた感じは、クラシックギターと言うよりは、むしろフォークギターに近い印象です。イタリア製で、スチール弦の張られていたことを考えると、主にマンドリンとの合奏などに使われた楽器なのかなあ、と想像しますが、特に文献資料にあったわけではありませんので、あてにはなりません。 ただ、現在でもマンドリン合奏の団体の中には、ナイロン弦のギターではなく、スチール弦を張ったギターを使うところも多く、また、そのほうがマンドリンとの音量、音質のバランスも良いように感じます。また、こういう楽器は、視覚的にもマンドリン族の楽器の中に良く溶け込むことでしょう。
さて、この楽器本来の用途に関する憶測はさておき、割れを修理したあとには、もちろん、スチールではなく、ナイロンかナイルガットに張り替えて、ヴァイスやバッハのリュート作品を弾いてみよう、というのが私の計画です。リュートの形をしたギターでリュート曲を弾いたとて、 だからどうなんだ、と言えば、別段、何か摩訶不思議なご利益のあるはずもないのですが、こういう、演奏そのものとは少し離れた、楽器にまつわるあれこれも、広い意味での音楽の楽しみのひとつでしょう。かなり先のことになるとは思いますが、どんな音がするのか、今からとても楽しみです。
プラハで見つけたリュートギター (了)
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