ギター・リュート工房訪問 (2001年11月10日、ルイス、竹内太郎さんとともに)

ロンドンを本拠地に活躍中のリュート奏者、竹内太郎さんに誘っていただいて、彼のお弟子さんたちとともに、イングランド南部、サセックス州の町、ルイスを訪ねました。ルイスは、竹内さんの言葉を借りれば「イギリスの鎌倉」。多くの歴史的建物の残る、美しい小都市です。また、この町はたくさんのギター・リュート制作家が工房をかまえていることでも知られています。

バルトフさん作のバロックギターロンドンのヴィクトリア駅に12時に集合し、列車でルイスへ。あいにく、この日は保線作業のため途中からバスに乗り換えて、ルイス着は二時ころとなりました。まず訪ねたのは、ロシア人のリュート製作家、アレキサンダー・バルトフさんの工房です。バルトフさんは物静かな印象ながら、とても気さくな方でした。工房も整理整頓が行き届いています。訪問の主な目的は、竹内さんのお弟子さんたちのリュートの調整です。フレットの高さ調節や取替え、エンドピンの取り付けなどを依頼しました。エンドピンには色々な材質で出来たものがありましたが、珍しいところではマンモスの牙なんて物もありました。バロックギターを弾く竹内さんこれだと一応象牙ではありますが、取引取締りの対象にはならないんだそうです。工房の壁には二台のリュートと、バロックギターと、ビオラダガンバがかけてありました。このバロックギターは、前回のルイスギターフェスティバルでのコンサートで竹内さんが使用したものだそうです。紅茶を淹れていただいてあれこれお話した後、次の工房へ向かいました。

ヒルさん(左)と弟子のリチャード君(右)次に訪れたのは、ギター製作家、スティーブン・ヒルさんの工房です。ヒルさんは、バルトフさんとは対象的で、元気のいい明るい人ですが、工房のほうはやや雑然とした印象でした。私はヒルさんにはこの夏のバースでの講習会でお目にかかっていたので、四ヶ月ぶりの再会ということになりました。最近、彼のギターはフラメンコ、クラシックの両モデルとも、イギリス内外で急速に評価を高めています。私たちが訪ねたときは、ちょうど杉トップ・ラティスブレージングのクラシックモデルを製作中でした。彼は今まで松トップのモデルしか製作していませんでしたが、ギタリスト、ギャリー・ライアン(イギリスの若手の中でもピカイチ、ロイヤルアカデミー・オブ・ミュージック教授)の協力を得て、この杉のモデルを開発・改良中とのことです。年間の製作本数は15台ほど。現在のウェイティングリストは1年とちょっとだということです。お値段は今のところ、2300-2500ポンド。今後予想される値上がりを考えれば、かなりお買い得かも知れません。私も先立つものがあれば、一本ほしい。

オリジナルのマンドーラ、16世紀の作この後、カフェで食事、休憩をして、再びバルトフさんの工房へ戻ると、もうリュートの調整が終わっていました。バルトフさんはアイルランドの音楽に詳しいようで、この後、アイルランドの古い楽器、マンドーラのレプリカを出してきて自ら採譜したアイルランドの民謡を弾いてくださいました。この訪問については、竹内さんが「現代ギター」に記事を執筆されるそうですので、ここではごく簡単にご報告するだけにしておきます。