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DTMによるヴァイスのリュートコンチェルト作成手順 まずは、ハードの環境ですが、これについては、レコーディングの録音環境をご覧ください。 1. まず始めに、楽譜ソフトを使ってPCでスコアを作ります。私はこの作業に、フィナーレの簡易バージョン、プリントミュージック(PM)を使います。こうして、スコアを入力しておけば、パート譜の作成や編曲のための移調作業などもクリック一発で出来ます。また、楽譜の内容をMIDIファイルとして出力できます。 2.リュートパートをギター用に編曲します。これは、当たり前ですが、まったくの手作業です。適当と思われるいくつかのキーに移調して、それぞれをプリントし、実際にギターでざっと弾いて見ます。変則チューニングの可能性も考慮に入れて、もっとも適当だと思われるキーを決めたら、実際の編曲作業に入ります。編曲といっても、そんなに大げさなものではなく、場合によっては、2、3箇所バスを上げてやるだけでギターで弾けるようになります。もちろん、非常に難しい場合もあって、これはまったくケース・バイ・ケースです。コンチェルトの場合は、リュート以外のパートが低音を担当してくれますから、ソロの場合よりは、バスラインが凸凹することについては、気を使わなくてすみます。 ところで、アリス・アーツがヨハン・シギスムント・ヴァイスのコンチェルトをギター用に編曲した楽譜がシャンテレルから出版されているのですが、そこでは「どうせ聞えないから」という理由で、あっさりとリュートパートのバスが、ほとんど全部略されているのには驚愕しました。ありゃあ、いくらなんでも無茶です。バスと一緒に弾くことで上声の滑らかさというようなものは多少失われるでしょうけれど、ある意味では、それが、ギターやリュートにその楽器らしさを与えているとも言えるわけで、アーツの楽譜はなんだか、マンドリンコンチェルトのようでした。 3.話が横道にそれましたが、編曲が終われば、練習して弾けるようにします。当たり前ですね。これが一番たいへんです。弾けなければ、プロジェクトはこの段階でパーということになります。
今回使った編曲譜です 4.1.で作ったMIDIファイルに、モルデントやトリルなどの装飾を追加します。この作業には、シェアウェアのMIDI Espressivoを使いました。けっこう使い勝手の良いツールです。もし、完全にマニュアルの打ち込みでやるとなると、これはたいへんな作業なんです。MIDIキーボードを使ってリアルタイムで音を入力するだけの技術のある人なら、実際に弾いてしまうのが一番良いと思います。(残念なことにこのシェアウェアは、製作した方が亡くなってしまったため、現在では試用版から完全版にアップグレードすることができません。そのため、機能に制限があって、ファイルの保存に少し手間がかかります) 5.4で概略の完成したMIDIファイルをPCのシーケンサソフトで開きます。私は、ケークウォークのホームスタジオ2004(HS)を使っています。
ホームスタジオとパーソナルオーケストラのパッケージ ケークウォークには、ソナーというHSの上位バージョンのDTMソフトがありますが、私にはHSの機能で十分です。そのほかに一般的なソフトとしては、ステインバーグのQubasisなどがあります。機能的には、ほとんど差がありませんから(と、思う)、基本的に何を使っても同じことだと思います。この時点で、曲のテンポを決めます。全体が同じテンポではまずいなら、セクションごとのテンポを決めます。また、部分的なアゴーギグで処理しきれないような、大きな表現・テンポの揺れの必要とされるところを見つけておきます。この曲の場合、エンディングの部分とその少し前のカデンツで、音楽がほとんど止まりそうになる所があります。インテンポのセクションをI、大きくテンポの揺れるセクションをFとすれば、全体の構成は、I1+F1+I2+F2ということになります。この分析の結果で、後にどうやってギターパートを録音するかが決まってきます。 6.どうしても必要があるというわけではありませんが、この段階でMIDIのデータを安っぽいサウンドカード付属のMIDI音源ではなくて、本物のソフトシンセの音で聞いておきます。オーケストラの楽器の音を再現する音源には様々なものがあります。今まで一般的だったのがローランドのSCxxなどの、外付けの音源です。そのほかに、最近では、サンプリングした実際の楽器の音をベースとした、ソフトシンセ、VST(あるいは、Dxi)インストルメント、サンプラー、サンプル音源、などというものがあります。名前は色々ですが、実質的には、その機能はほとんど同じもので、ソフトという名がついているのは、外付けのシンセサイザーではなくて、PCにインストールしてPCのCPUパワーを使ってシンセシスを行う、一種のソフトウェアだからです。ここでは、色々調査をした結果、コストパーフォーマンスに優れると思われる、ギャリタンのパーソナルオーケストラ(GPO)というソフトシンセを使いました。そのほかのオプションとしては、ステインバーグのハリオンとか、イーストウェストのシンフォニックオーケストラとか、その他いろいろあります。 GPOはHSのプラグインという形で使えますから、HS上でスムースにソフトシンセの音を鳴らすことが出来ます。ざっと聞いてみて、同じヴァイオリンでもいくつかある楽器の中から好みのものを選びます。ちなみにここでは、ファーストヴァイオリンはガルネリ、セカンドがストラッドです。(マニュアルにそう書いてありますが、ほんとでしょうか・・・)さらに、フレージングを考え、不自然なところを書き出しておけば、その後の作業が効率的に行えます。 7.いよいよギターを録音します。ギターとMIDIをシンクロさせるためには、5.で決めたI1+F1のセクションと、I2+F2のセクションを別々に録音するという作戦を取りました。録音に当たっては、あらかじめ決めておいたテンポでHSからメトロノーム音を鳴らします。これをヘッドフォンで聞きながら、まずI1+F1の部分を録音します。I1の部分はメトロノームにあわせ、F1のセクションまで来たら、メトロノームを無視して自由に弾くわけです。同じことを、後半のI2+F2のセクションについても行います。この二つのテイクをを、HS上で張りあわせれば、ギターのパートはほぼ出来上がりです。 8.次は、ギターとMIDIトラックをシンクロさせる作業です。7.で出来たギターパートのインテンポの部分に、I1+F1、I2+F2という二つの部分に切ったMIDIのトラックをかさねます。重ねるといっても実際にトラックをまとめてしまうわけではなくて、HSのマルチトラックレコーダ・ウィンドウ上で小節の頭をそろえるだけです。ギターのI1の頭とMIDIのI1の頭、ギターのI2の頭とMIDIのI2の頭をそろえます。そうすると、I1、I2の部分はほぼシンクロしていて、F1、F2の部分が大きくずれたファイルが出来上がります。F1の部分は、ギターがテンポダウンしていますから、MIDIトラックには、途中に空白が出来ます。 この、大きくずれたずれたMIDIの部分を引き伸ばしてギターとシンクロさせるのには、ギターのトラックの波形を見てやる必要があります。各ビートに相当するシグナルの頭にカーソルを合わせると、タイム・ウインドウに57:03:578などという数字が表示されます。この場合、そのシグナルは57小節目の3拍目の頭から578/1000拍進んだところに現れるという意味です。そこで楽譜を見て、このギターの音と同時に鳴るべき音のMIDIデータを57:03:578に修正します。この作業は、実際に数字で打ち込んで行っても良いのですが、実際は、ピアノロールウィンドウというMIDIの音を棒状のグラフで表示したウィンドウで、マウスを使って修正する方が簡単です。こういう風に書くとたいへんな作業のようですが、いったん目安になるビートの修正さえ終われば、後は極めて視覚的に作業が出来ます。要するに、バーで表された音のブロックをきちんと頭をそろえて並べてゆく、整理・整頓の作業なので、まるで本棚の整理でもしているような感覚で作業出来ます。
ヴァイオリンパートをピアノロールで見たところ ほぼシンクロしているIのセクションについても、基本的に同じことをします。こちらのほうは、ギターとMIDIのずれ方を注意してみてみると、なかなか面白いことがわかります。つまり、ここに現れてくるずれというのは、要するに、私がギターを弾くときに、演奏を音楽的にするために、言葉を変えれば、ノリの要素を出すため、歌うために、無意識にやっていることそのものだからです。例えば、アルペジオで弾かれる和音では、ベースをやや拍の前から始め、トップノートがほぼ拍の頭に来るようにしていたり、細かい音符の上昇音型では、かなり拍を食って昇って行ってトップノートをやや長くとって強調していたり、無意識のうちに色々なことをしているのがわかります。一般に、正確なビートよりやや早く入っていることが多く、平たく言えば「つんのめり気味」です。その量は、四分の一拍から、三分の一拍に達することもあります。この拍のずれがいわゆる、テンポルバート、盗まれたテンポに相当するわけですね。 9.またもや話がかなり脱線しましたが、こうしてシンクロが完成すれば、次に各パートに抑揚をつけて行きます。これは数字の打ち込みなどではなくて、MIDIコントローラ(キーボード)のスライダあるいは、モジュレーションホイールを操作して行います。具体的には、ファーストヴァイオリンなら、ファーストヴァイオリンだけをレコーディングモードで再生しながら、リアルタイムでスライダーを操作して、音の強弱をつけて行くのです。これは、編集というよりは、むしろ演奏に近い作業で実際のオーケストラの指揮者の仕事と同じですね。録音モードを止めれば、自分のつけた抑揚がそのまま記録されているわけです。気に入らなければ、何度でもやり直しが出来ます。これを各パートについて行い、最後に細かなミスなどを修正すれば、編集作業は完了です。
HSで作業の最終工程を終了したところ 10.最後に、各楽器のパン(左右の位置)を決めたり、リヴァーヴなどの効果を加えて残響調整をし、さらに各トラックの音量のバランスをとった上で、一つのオーディをファイルにミックスダウンする作業があります。これについては、まあ、スタンダードな作業なので詳しくは書きません。今回は、ギターパートはいつものようにケークウォークのFX3で残響調整をしてステレオ化し、弦のパートは、GPOに添付の、アンビエンス・リヴァーヴを使いました。ここまでは、すべて24ビット、44.1KHzで作業してきましたが、一つにまとめたオーディオファイルは、CDなどとの互換性をとるためにまず16ビットのwavファイルにします。ウェブ用にmp3ファイルもエンコードして、晴れてプロジェクト終了です。 ふうー、どうもお疲れ様でした。 私もDTMは、まったくの初心者です。なんと言ってもこれが初めてのDTM作品ですから。こういうことに経験のある方、また、経験はないけれど、興味があってやってみたいという方、特にまったくのDTMではなくて、プレイヤーの立場からDTMを使ってみようという方(もちろん、そうでなくてもかまいませんが)、ぜひ、掲示板で色々情報交換しましょう。 (了) |