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(2001年7月20日−26日) これは、今年の「現代ギター」12月号、「海外だより」に掲載された私の一文に、もう少しざっくばらんなコメントをつけたものです。 去る7月20日から二週間にわたり、イギリス南部の都市バースにて、バース国際ギターフェスティバルが開催された。ロンドンから車で西へ二時間ほど、バースは古くはローマ人によってひらかれた美しい街だ。中心部には、今でもローマ時代の公衆浴場跡が残る。会場となった、バース·スパ·ユニバーシティー·カレッジは、四方を農場に囲まれた郊外の小高い丘の上にあった。フェスティバルは、大きくクラシックとコンテンポラリーのコースに分かれており、コンテンポラリーの部では、ジャズやロックなどの音楽がとりあげられた。その他にも、コンピュータミュージック、作曲などのコースもあり、盛りだくさんの内容だったが、ここでは筆者の参加したクラシックのコースについて報告する(クラシックコースの開催期間は、7月20日―26日)。コース期間中は、午前中にマスタークラスあるいはグループレッスン(中級、上級)、午後はレクチャーかテクニックのクラスに続いてアンサンブルのクラス、そして夕食後にコンサートというスケジュール。まずは、連日のコンサートとアドミラ·コンクールの模様をレポートしよう。 7月20日 フェスティバルは、ニコライ·モルドビヌの指揮するシティ·オブ·ロンドン·シンフォニアと、このフェスティバルの芸術監督でもある、トム·カーステンスのコンサートで幕を開けた。曲目は、交響曲40番 (モーツァルト)、交響曲45番(ハイドン)、ギターとオーケストラのためのマンカンツァ(ジャイルズ·スウェイン、世界初演)、アランフェス協奏曲(ロドリーゴ)。スウェインは無調の、かなり難解な作品。ロドリーゴは、無難な出来だったが、PAが使用されていたわりには、オーケストラにギターがよく聞こえないらしく、ヒヤッとする場面も多々あった。 カーステンスの無難な出来というのは、まあ、止まらなかったくらいの意味ですね。ファゴットとギターはすくなくとも1拍はずれていました。スウェインの曲は、30分くらいオケとギターがチューニングしてるのを聞かされた気がしました。 7月21日 アビゲイル·ジェームズのランチタイムコンサートは、現代の作品ばかりを集めたプログラム。曲目は、Talvi、Black Venus(フィリップ·カシアン)、Bells
and Lachrimae and Stillness (マイケル·ゼブ·ゴードン)、Shard(エリオット· カーター)、Stélé(フィリップ·ヒュ−トン)。ジェームズはロイヤル·カレッジ·オブ·ミュージックに学び、今年1月にロンドンのパーセルルームでデビューを果たした、若手の女流ギタリスト。困難な和音も難なく押さえていく技術に、非凡な実力を感じた。 この人はほんとにうまかったです。もっとスタンダードな曲も聴いてみたかった。 夜のコンサートには、ローラン·ディアンスが登場。例によって、即興演奏に始まり、マルボローの主題による変奏曲(ソル)、練習曲5番(ビラ·ロボス)、自編の作品では、ワルツ(ショパン)、ブラジル風バッハよりアリア(ビラ·ロボス)、バーデン·パウウェル、ジャンゴ·ラインハルトの作品他が演奏された。特に音量が豊かだというわけでもないのに、演奏がダイナミックに感じられるのは、弱音の使い方が絶妙だからだろう。「力まかせにフォルテッシモを弾かなくても、音楽は出来るという見本のような演奏」とは、筆者の隣に座っていたジェラルド·ガルシアの弁。ディアンスは、曲の合間にも、ホールの外から聞こえるかもめの鳴き声を真似て、即興演奏して見せるなど、茶目っ気たっぷりで、終始リラックスしたコンサートだった。 このコンサート、最後には客は狂乱状態でした。ブラボーの嵐。ディアンスはこのあと、関係者とインド料理を食べにいったのですが、酔っ払ったイギリス人にチキンカレーのギトギト油のついた手で握手攻めにされて、辟易したそうです。やっぱりイギリス人はヨーロッパの田舎者。 7月22日 この夜のロベルト·アウセルのコンサートも昨夜のディアンスに劣らず、印象深いものだった。プログラムは、糸を紡ぐ娘、先生、アメリアの遺言、盗賊の歌(カタロニア民謡、リョベート編)、ドビュシー讃(ファリャ)、南のソナチネ(ポンセ)、祈りと踊り(ロドリーゴ)、ゴヤのマハ(グラナドス)、マジョルカ、カディス、セビーリャ(アルベニス)、唄と舞曲1番(ピポー)、五つのタンゴ(ピアソラ)。ただ、美しい表情豊かな音楽とは対照的に、ステージ上のアウセルは、とても神経質そうに見えた。最初のうちは、曲の間に椅子を立って礼をすることもなく、ただもくもくと弾き進む。聴衆は、どこで拍手をしたらいいものやら、当惑していた。この人は、いつもこうなのだろうか。 ほんとに下を向いたまま、ずっと弾き続けるんですよ。とにかく、「一刻でも早くプログラム全部弾き終えて家に帰りたい」って感じでした。マスタークラスのときは、ちょっと静かな普通の人でしたが。表面板をやや上に向けて、ネックを前へ出したカルレバーロ式の構え方で、全身をリラックスさせて弾くことが大事だと、力説していました。すばらしく、音のきれいな人でした。 7月23日 この夜のコンサートには、マーク·エデンとクリストファー·ステルのデュオ(エデン·ステル·デュオ)が登場。両者とも、ロイヤル·アカデミー·オブ·アートの卒業生で、在学中にデュオを結成。卒業後は、ブリュッセルで、アサド兄弟に学んでいる。プログラムは、協奏的変奏曲Op130(ジュリアーニ)、クラブサンのための作品(ラモー、アサド編)、パストゥレル(ドッジソン)、コンチェルティノ(コシュキン)、トナデーリャ(ロドリーゴ)。このデュオには本当に驚いた。とにかく、うまい、速い。日本でも、もっと紹介されてよい人たちだろう。演奏された曲の中では、特にコシュキンが、ショシュタコ−ビッチの弦楽四重奏曲を思わせる重厚な音楽で、よい作品だと感じた。 このデュオは本当にすごかった。アンコールでは、一台のギターを二人で弾く 「連弾ギター版」 (一人が1−3弦、もう一人が4−6弦を担当)も披露してくれました。鮮やかでしたよー。 7月24日 クラシックのコースの音楽監督でもある、ギャリー·ライアンのコンサートが行われた。曲目は、ファンタジア(ムダーラ)、ファンタジア7番(ダウランド)、プレリュードとプレスト(リュート組曲三番より、バッハ)、四つの小品(マルタン)、マジョルカ(アルベニス)、Verano
Portena(ピアソラ)、タンゴアンスカイ(ディアンス)、大序曲(ジュリアーニ)、舞踏礼賛(ブローウェル)、さくらの主題と変奏(横尾幸弘)、六つのバルカンミニチュア(ボグダノヴィッチ)、ジョンゴ(ベリナティ)。ライアンは、94年にロンドンのパーセルルームでデビューコンサートを行い、96年には27歳の若さでロイヤル·カレッジ·オブ·ミュージックのギター科教授に就任している。ソリストとしてだけでなく、教育者としてもイギリス内外での評価は高い。 この人もよかったです。とてもまっすぐな音楽を作る人で、ジョン・ウィリアムスの若いときもこんな感じだったのかな、と思いました。 7月25日 スペインのギターメーカー、アドミラ社の協賛による、21歳以下の若いギタリストを対象としたギターコンクール(Adomira
Young Guitarist of the Year Competition)の本選が行われた。予選参加者は、わずか8名と寂しかったが、本選に残った3名のレベルは高く、三人ともほとんどミスらしいミスもない演奏を披露して、激戦となった。本選は自由曲に加えて、課題曲、小麦畑にて(ロドリーゴ)、Red(エロリン·ウォレン、コンクール委嘱作品)にて競われた。結果は、第1位Boris
Tesic 、第2位Johannes
Moller 、第3位Sam Chapman 。特に、1位のテシックの自由曲、タレガのベニスの謝肉祭による変奏曲は佳演で、印象に残った。テシックとモラーは現在、ロンドンのロイヤル·カレッジ·オブ·ミュージックでギャリー·ライアンに、チャップマンはロイヤル·アカデミー·オブ·アートで、マイケル·ルウィンに学んでいる。 一位になったボリス君は超強心臓。リハーサルも聴いたのですが、ちらほらミスもあって、あまり良いとは思わなかったのです。先生のギャリーにも 「もう少し、傷を少なくしないと」 なんて言われていましたが、本人はまったく気にする様子もなく、「ちゃんとウォーミングアップすれば、大丈夫だから」 なんていって、平然としていました。ふたを開けてみれば、その言葉どおり、ほとんどミスのない完璧な演奏。タレガの、「ベニスの謝肉祭による変奏曲」では、ポルタメントを多用したコミカルな変奏に客席から思わず、クスクス笑いが漏れるくらいのお茶目な演奏を披露してくれました。二位にはいった、ヨハン君の弾いたメルツも印象に残りました。 また、
コンクールに先立って、昨年の優勝者、アントン·ペトロフによる、ランチタイムコンサートが開かれた。プログラムは、プレリュードとフーガ(BWV997より、バッハ)、To
Play or Not to Play(ドメニコーニ)、ゴヤのマハ(グラナドス)、子供のためのジャズ組曲(A.
Vinitskiy )。 これは聴き逃してしまった。 7月26日 最終日は、スチューデントコンサート。演奏のレベルは様々だったが、ソロあり、アンサンブルあり、初級者も上級者もみなそれぞれに、一週間の研鑚の成果を披露した。この日のステージの後半は、コンテンポラリーのコースと合流して、全英ウクレレオーケストラのコンサート。チャイコフスキーのピアノコンチェルトから、最新のポップスまで、みなウクレレでやってしまうという、ユニークなグループだが、唄あり踊りありのステージは、文句なく楽しめた。 マスタークラスとレクチャー マスタークラスの講師は、以下のとおり。21日/ロベルト·アウセル、22日/ローラン·ディアンス、23日/マイケル·ルウィン、24日/リチャード·ストッカリエット、25日/ギャリー·ライアン、26日/トム·カーステンス。 筆者はライアンのクラスを、ヴィラ·ロボスの前奏曲一番で受講したが、基本的な運指の問題や、効果的な音色変化の方法について、丁寧に指導していただいた。明るい性格で、生徒の緊張をほぐすのがとても上手な人だ。 ただのマスタークラスとはいえ、人前で弾くのは本当に久しぶり。緊張のあまり、手が震えました。でも、マスタークラスの良いところは、コンサートと違ってやり直しのきくところ。レッスンが進むにしたがって、リラックスしてくるので、最後には気持ちよく弾けました。ギャリーにも、後日 「 I liked your Villa-Lobos, especially, the second time round 」 といっていただいて、感激しました。 その他、レクチャーにも、ディアンスによる「即興演奏について」、イギリスの製作家、スティーブン·ヒルの「ギター製作」等、興味深いものが多くあった。ヒルのギターは、フラメンコモデルを中心に近年人気が高まっている。スモールマン風のラティス構造を採用したクラッシクモデルを試奏してみたが、クリアな音色のとてもバランスのよい楽器だと感じた。現在は、杉のモデルをギャリー·ライアンの協力を得て開発中とのこと。 イギリスで行われる、ギターフェスティバルで、規模の大きいものといえば、バースのほかにはウェスト·ディーンのサマースクールがあるが、どちらも従来、日本にはあまり紹介されてこなかったと思われる。英語圏での開催なので、言葉の面では、日本からも比較的参加しやすいかもしれない。興味のある方は、以下のサイトを参照していただきたい。 http://www.bathspa.ac.uk/igf/guitar_odyssey.html
今年も7月にイギリス南部の小都市、バースにて バース国際ギターフェスティバルが開かれます。 開催期間: 7月19日−26日 マスタークラス講師: ロスアンジェルス・ギターカルテット(ジョン・ディアマン、ビル・カネンガイザー、スコット・テナント、アンドリュー・ヨーク)、エデン・ステルデュオ(マーク・エデン、クリス・ステル)、クレイグ・オグデン、ギャリー・ライアン、トム・カーステンス、ティム・ウォーカー アドミラ・ヤングギタリスト・オブ・ザ・イヤー コンクール (22歳まで) も併せて開催 LAGQのマスタークラス・コンサートは7月19日−21日です。エデン・ステルはデュオのマスタークラスを行います。そのほか、一週間を通してコンサート、テクニッククラス、アンサンブルなど、盛りだくさんの内容です。19−21日の週末だけの参加も出来ます。昨年のレポートはこちらです。私は少なくとも週末だけは、参加したいと思っています。 お問い合わせは IGF@BATHSPA..AC.UK. まで。海外から参加希望の方で、英語での申し込みに不安のある方、若干のお手伝いは致します。私まで、メールください。
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