メカニック研究

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1.             左手の技術2 (脱力)[1, 2, 3, 12, 22]

 脱力については、第一章アウェアネスのところに詳しく書きました。(2月14日現在、未完です)脱力とかリラックスというのは、ギターの演奏に対して用いた場合、どうも誤解を招きやすい言葉のようです。一般に、それはある「心と体の状態」だと考えられていて、いったん脱力あるいはリラックスしてしまえば、後はもう何も考えなくとも、自然に何もかもが上手く行く、というふうに考えている人が多いように思います。しかし、実際に我々が楽器を演奏する時のことを考えてみると、演奏中にある程度のテンションが生じるのはどうしても避けられません。それは、ギターを弾くという作業の一部なのです。弦をはじけば指に力が入るし、どんなに上手くやってもセーハの際には通常の押弦に比べてはるかに大きな力が必要です。要するに、こういうギターを弾くという作業によって生じた筋肉の緊張をそのままにしておくのではなく、いかにすばやくそれを知覚し、積極的に、意識的に取り除いてゆくか、というのが脱力の技術の本質だと思います。それは通常考えられているよりは、よほど能動的に自分から自分の体に対して働きかけてゆく作業である、と指摘するギタリストが多いのです。しかし、残念なことに、その具体的な練習方法を提示している人は本当にわずかです。ここでは、今すぐにでも実行できる、左手の脱力のための練習メニューを紹介します。[1]

 必要最小限の力で押さえること[1, 2, 3]

「左手の押さえは、指を弦に押し付けるというような乱暴なものではなくて、弦の上にふわっと置いた指に、ちょうどマウスをクリックするように、軽くスイッチを入れるような感じ」だと、あるトップギタリストから聞いたことがあります。言葉は違っても、同じような発言を耳にされた方も多いでしょう。全く夢のような技術で、とても常人には到達できない境地のように思いますが、このような感覚は案外簡単に体験できます。具体的なやり方を説明しましょう。

まず、左手人差し指で6弦1フレット、Fの音を押さえてみてください。そして、右手Pでmfくらいの強さでこのFの音を弾きながら、左手の押さえをだんだん弱くしてゆきます。そうすると、あるところで今までクリアに鳴っていた音がびりつきはじめ、「じー」いう音を出す力かげんのところがあるでしょう。そこを通り越して、さらに指の押さえを弱めて行くと(指は弦からは離しません)、完全にミュートされた「ぽんぽん」という音になります。このように、指の押さえを強くしたり、弱くしたりしながら、ビビリ音の出るポイントを確認してください。このビビリ音ポイントより、ほんの少しだけ強い押さえが「必要最小限の力」というわけです。こういう実験をしてみると、普段いかに不必要な力を入れて押さえていたかが、良く分かると思います。同様に、中指で6弦2フレット、薬指で3フレット、小指で4フレットという具合に、それぞれの指でこの「必要最小限の力」を確認します。全く単純な作業ですが、これだけの事でも、例えば、練習の始めと中ごろに行うようにすれば、他の練習をしている最中でも脱力に対する意識は大きく変わってきます。

ビビリ音によるスケール[12]

上の練習を一歩進めるためには、スケールを「ビビリ音」で行うという方法があります。私は、セゴビアのハ長調の2オクターブのスケールを使いますけれど、基本的にはどんなスケールを使ってもかまいません。当然、解放弦を含まないものの方がやりやすいでしょう。スピード練習ではありませんから、徹底的にゆっくり、すべての音がクリアでもない、ミュートされた音でもない、「ビビリ音」になるように左手の押さえに意識を集中して行います。やってみると分かりますが、ほとんど左手に力を入れていないにもかかわらず、つい、どこかでクリアな「良い」音が出てしまうのに驚かれるでしょう。

 

実際の曲に応用する

説明するまでもありませんが、この段階では、実際の曲をすべて「ビビリ音」で弾きます。重音の少ない、バッハのヴァイオリンのためのソナタやパルティータ等がこの目的には便利でしょう。[12] テナントは、BWV1002のクーラント・ドゥーブルを、スケールの練習を兼ねて薦めています。[1]

 

毎日の練習へのヒント

もしあなたが、1日に1時間ギターを練習するならば、その1時間の間、ずーっと脱力のことばかりを考えているわけには行きません。脱力以外にも、集中すべき重要な課題はたくさんあります。しかし、脱力はどんな練習をする際にも、とても重要なポイントになりますから、常に、少なくとも頭の片隅では意識していることが必要です。かといって、人間というのは基本的に怠惰なもので、「頭の片隅に留めて置こう」程度に考えていることは、なかなか頭の片隅に残っていてくれたりはしません。対策としては、一時間のうち五分間でも良いから脱力だけに集中する時間を作ることです。アルペジオやスケールと同じように毎日の日課にするのです。また、脱力のための方法としては、アウェアネスに書いたような、精神面での技術がとても重要です。(アウェアネスは大きなテーマなので、文献調査に手間取っています。近日中にアップしたいとは思うのですが)

 

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