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メカニック研究
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0−2.解剖学とボディ・マッピングのすすめ この章の結論は、メカニックを向上させるために、新しい「運動の感覚」を探るためには、解剖学の知識が役に立つ、ということにつきます。解剖学といえば大げさですが、要するに自分の手指、腕などがどんな構造をしていて、どういう仕組みで動くのかを大まかに知っておこうということです。そんなことを知らなくてもギターは弾ける、とおっしゃる方も多いでしょう。ごもっともです。いつだったか、かなり上手なプロのギタリストと話していて、その人が手の指の中にも筋肉があると思っているのを知って、とても驚いたことがあります。あまり使いたくない言葉ですが、これは才能の問題でしょう。どこかの誰かが声を大にして「天は人の上に人をつくらず」と主張したところで、運動のセンスには大きな個人差のあることは否めません。学校の体育の授業でも、どんな新しい運動もすぐにコツを呑み込んで上手になってしまう人間が、クラスに一人や二人は必ずいたものです。私は、ギター演奏だけが例外だという理由を思いつきません。ですから、私のようなややニブイ部類に属する人間は、解剖学であろうがなんであろうが、使えるものはすべて総動員しなければ、こういう「神に祝福された」人たちには、とても対抗できません。 さて、問題の解剖学とボディ・マッピングの話ですが、私のこんな駄文を読むよりは、文献23のバーバラ・コナブルの著書を読むことをおすすめします、といってしまっては、身もふたもありませんね。序章からすこし引用してみましょう。 「ボディ・マッピングを発見したのは、ウィリアム・コナブル教授で、彼はオハイオ州立大学音楽学部でチェロを教えています。ボディ・マッピングというものがあるらしいと彼が気づいたのは、演奏中の生徒の動きと、自分の体構造についての彼らの言い分が、一致していたからです。彼の観察によれば、生徒自身の動きは自分の構造がどうなっているかという思い込みにしたがっており、体の実際の構造に沿ったものではなかったのです。自分の実際の構造の直接的感覚に基づいて演奏するようになると、生徒の動きは効率よく、表現が豊かになり、音楽に対して適切なものになりました。 ボディ・マッピングによって自分のボディ・マップを意識的に修正し洗練することで、動きが効率的、優美、協調的になります。ボディ・マッピングは、長く続けると、応用によって、どんなミュージシャンでも、自然のように演奏できるようになります」 ちょと、訳がこなれないところがありますが、そのまま引用しました。それにしても夢のような話ではないですか。ここでは、体の構造の理解が運動の学習を助ける例として、私自身の体験から、スキーを例にしてお話したいと思います。ギターの例を使わないのは、手指・腕の構造は細かすぎて、導入用の例としては適当でないと思うからです。
さて、スキーをする方なら、今では、死語かもしれませんが、ウェーデルンという言葉を聞いたことがあるでしょう。私がスキーに熱中していたのは二十数年前のこと、最近は、単にショートターンというのでしょう。上体を谷へ向けたまま、短いパラレルターンを繰り返して、ほぼまっすぐに斜面を滑り降りる技術です。当時、私は「お前のウェーデルンにはキレがない」、今風に言えば、「カービングしていない」と言われて悩んでいました。ウェーデルンそのものは安定していますし、本人としては、しっかり谷足に荷重して、完璧のつもりなのですが、「谷足に乗ったまま、横ずれしている」のだそうです。その時の私の、自分の体についての理解は、Aのようなものでした。実にお粗末です。そんなころ、新潟のSAJの名門として知られる浦佐スキーの講習会に参加する機会がありました。そこで、その浦佐スキー学校の先生は、きわめて乱暴な口調ではありましたが、実に的確なアドバイスをしてくれたのです。 「こら三番(私のゼッケンです)股関節を使えよ、股関節を!」 その講習の後、宿屋へ帰って廊下の姿見の中の自分とにらめっこをすることしばし。私は、自分の体が実は、Aではなくて、Cのようになっていることに気づいたのです。足というのは、この股関節を回す意識をもてば、骨盤をまったく動かさなくともかなりの程度動きます。その際、膝は左右に大きく振れて、足の裏が床から離れてきます。Cにおいて、赤く印をつけた関節の動きを意識することがウェーデルンの時に、スキーを雪面に強くエッジングするコツだったのです。以前は、Bのように骨格の理解が不足していたために、意識が散漫になって、結果として腰が回り、スキーがずれていたのです。自分の体の中に、股関節を「発見」したおかげで、私のウェーデルンは、その後急速に進歩しました。 ギター演奏においても、同様のことは起こり得ます。たとえば、「ギタリストのための解剖学」に図示してあるように、ほとんどの弾弦操作は、腕の中の筋肉を使って行われます。新しい弾弦の感覚を探すなら、今まであまり注意をはらわなかった腕の中の感覚に意識を向けてみてはどうでしょうか。左手にも同じようなことが言えます。指を開くストレッチを担当するのは、手の中にある手内筋群です。そしてその状態で押弦するには、比較的独立性の高い手内筋を緊張させたまま、各手指についての独立性の乏しい腕の筋肉を動かす必要があります。だから、左手を大きく開いた状態では、指の独立性が失われがちなのです。こういうことを知ったからといって、もちろん、急に指が自由に動くようになるわけではありません。しかし、こういうやり方で新しい運動の感覚を探ってゆく方が、ただやみ雲に、それこそ体中に力を入れてがんばるよりは、効率が良いのではないか、と提案したいのです。また、こういう意識をもって、練習のし過ぎによる筋肉疲労に、より早く気づくようになれば、腱鞘炎の予防にも効果があるでしょう。 |
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